身長1メートルの人類ホモ・フローレシエンシスとは? どこから来たのかはまだわからない

2004年、インドネシアの島で、大人なのに身長が約1メートルしかない人類の骨が見つかりました。脳の大きさは、もっとも小さい猿人と同じくらいです。それでも、この人類のものとみられる石器が見つかっています。この小さな人類がどこから来たのかは、20年たった今も決着していません。
3行でわかる
- ホモ・フローレシエンシス(フローレス原人)は、インドネシアのフローレス島にいた身長約1メートルの人類です。
- 骨は約10万〜6万年前のもので、同じ島では約70万年前から小さな祖先がいました。
- ジャワ原人の仲間が島で小さくなった説と、もっと古い人類から来た説に分かれています。
01 わかっていることホモ・フローレシエンシスはどんな人類?
フローレス島のリャン・ブア洞窟で見つかった、大人で身長約1メートル、脳の大きさ約380ccの人類です。古い特徴と新しい特徴をあわせ持ち、新しい種とされました。
2004年の論文は、身長も脳の大きさも、もっとも小さいアウストラロピテクス(数百万年前のアフリカの猿人)と同じくらいだと報告しました [1]。脳の約380ccは、500ミリリットルのペットボトルの4分の3ほどです。
それまでアジアにいた人類は、ジャワ原人などのホモ・エレクトスと、私たちホモ・サピエンスの2種だけと考えられていました [1]。小さな人類の発見で、ヒトの仲間(ホモ属)の体の形は思ったより多様だとわかりました。
02 どうやってわかったのかいつ、どれくらい小さかったかはどうやってわかったの?
洞窟の地層の年代を測り直し、島の別の場所で古い骨も見つけました。骨の形を、ほかの人類と細かく比べて家系図を作る研究も行われています。
わかっているブラウンら(2004年、Nature)[1]
大人の骨で、身長は約1メートル、脳の大きさは約380ccでした。論文は、ホモ・エレクトスの群れが島で長く孤立し、体が小さくなったという説がもっともありそうだとしました。
どうやって: リャン・ブア洞窟の地層から掘り出した頭の骨と体の骨を、ほかの人類の化石と比べました。
わかっているスティクナら(2016年、Nature)[2]
骨の年代は約10万〜6万年前と測り直されました。この人類のものとみられる石器は、約19万〜5万年前の地層から出ています。
どうやって: 洞窟の地層を調べ直しました。以前は約9万5000〜1万2000年前の地層とされていましたが、調べ直すと、その年代は支持されませんでした。
わかっているブルムら・ファン・デン・ベルフら(2016年、Nature)[3][4]
島の中央のマタ・メンゲで、約70万年前の下あごの骨と歯6本が見つかりました。少なくとも3人分で、下あごと奥歯はリャン・ブアの骨よりもさらに小さいものでした。
どうやって: 化石をはさむ火山灰の層などの年代を、いくつかの方法で測りました。歯と下あごの形はリャン・ブアの骨に似ていて、ジャワ原人の仲間から小さくなった説を支えるとしました。
有力な仮説海部ら(2024年、Nature Communications)[6]
マタ・メンゲの約70万年前の大人の腕の骨は、約6万年前の骨より9〜16%短く細いものでした。これまで報告された化石人類の大人の腕の骨の中で、もっとも小さいものです。
どうやって: 同じ地層から新しく見つかった腕の骨と歯を比べました。歯の1本は初期のジャワ原人に近い形で、少なくとも70万年前から小さな体の系統が島で続いていたと結論しています。
有力な仮説アーグら(2017年、Journal of Human Evolution)[5]
頭・あご・歯・体の骨の特徴で家系図を作ると、ジャワ原人の仲間ではなく、ホモ・ハビリスに近い、175万年前より古い系統から来たという結果になりました。
どうやって: 多くの特徴をコンピューターで比べて家系図を作りました。ホモ・サピエンスの病気で小さくなったという説は、特徴が合わないとして否定しています。
03 数字と例えでいうとどれくらい小さく、いつまでいたの?
身長は約1メートル、脳は約380ccです。小さな体の祖先は約70万年前から島におり、骨は約6万年前のものまで見つかっています。
| 項目 | 値 | 身近な例えでいうと |
|---|---|---|
| 身長 | 約1メートル [1] | 1メートルのものさしと同じくらい |
| 脳の大きさ | 約380cc [1] | 500ミリリットルのペットボトルの4分の3ほど |
| 骨の年代 | 約10万〜6万年前 [2] | 1年を1ミリにすると60〜100メートル |
| 小さな祖先がいた時期 | 約70万年前 [3] | 1年を1ミリにすると700メートル |
| 70万年前の腕の骨 | 6万年前の骨より9〜16%小さい [6] | 時代が古いほうが、さらに小さかった |
04 まだわかっていないことホモ・フローレシエンシスで、まだ謎なのは?
どの祖先から来たのか、なぜここまで小さくなったのか、私たちの祖先と出会ったのかは、まだわかっていません。
- 祖先はジャワ原人か、もっと古い人類かマタ・メンゲの化石はジャワ原人の仲間から来た説を支えます [4][6]。一方、骨の特徴の家系図では、もっと古い系統から来た結果が出ています [5]。フローレス島ではジャワ原人の化石そのものはまだ見つかっていません [5]。
- なぜ体が小さくなったのか島で長く孤立した群れが小さくなった、という説が出されています [1]。ただ、どんな理由で小さい体が有利だったのかは確かめられていません。
- ホモ・サピエンスと出会ったのかホモ・サピエンスは約5万年前までにオーストラリアに着いていました [2]。フローレシエンシスが5万年前より後も生きていたかは、わかっていません [2]。
05関連する記事
06よくある質問
ホモ・フローレシエンシスは病気の人の骨ではないの?
発見のあと、ホモ・サピエンスが病気で小さくなったという説も出ました。2017年の研究は骨の多くの特徴を比べ、病気では説明しにくいとしています。約70万年前の小さな祖先の化石も見つかっています。
ホモ・フローレシエンシスは私たちの祖先なの?
いいえ。2017年の研究では、ホモ・サピエンスと近い親戚という関係は否定されました。私たちとは別の枝の人類と考えられています。
ホモ・フローレシエンシスはいつ絶滅したの?
骨は約6万年前のものまで、石器は約5万年前のものまで見つかっています。それより後も生きていたかは、まだわかっていません。
出典
- Brown P, Sutikna T, Morwood MJ, et al. (2004). A new small-bodied hominin from the Late Pleistocene of Flores, Indonesia. Nature 431, 1055-1061. https://doi.org/10.1038/nature02999
- Sutikna T, Tocheri MW, Morwood MJ, et al. (2016). Revised stratigraphy and chronology for Homo floresiensis at Liang Bua in Indonesia. Nature 532, 366-369. https://doi.org/10.1038/nature17179
- Brumm A, van den Bergh GD, Storey M, et al. (2016). Age and context of the oldest known hominin fossils from Flores. Nature 534, 249-253. https://doi.org/10.1038/nature17663
- van den Bergh GD, Kaifu Y, Kurniawan I, et al. (2016). Homo floresiensis-like fossils from the early Middle Pleistocene of Flores. Nature 534, 245-248. https://doi.org/10.1038/nature17999
- Argue D, Groves CP, Lee MSY, Jungers WL (2017). The affinities of Homo floresiensis based on phylogenetic analyses of cranial, dental, and postcranial characters. Journal of Human Evolution 107, 107-133. https://doi.org/10.1016/j.jhevol.2017.02.006
- Kaifu Y, Kurniawan I, Mizushima S, et al. (2024). Early evolution of small body size in Homo floresiensis. Nature Communications 15, 6381. https://doi.org/10.1038/s41467-024-50649-7


