絶滅

恐竜はなぜ絶滅したのか 隕石説はどうやって確かめられたか

2026年10月28日更新・約6分で読めます

チクシュルーブに小惑星がぶつかる様子の想像図
Photo: Donald E. Davis / Public domain / Wikimedia Commons
AIによる調査論文と博物館・研究機関の資料をAIが調べ、内容を確かめて整理しました(出典は末尾)。

恐竜(鳥を除く)が姿を消したのは、約6600万年前です。地球の歴史46億年を1年にすると、12月26日の夕方にあたります。原因が「宇宙から来た岩」だという考えは、1980年に1本の論文から始まり、40年以上かけて確かめられてきました。

3行でわかる

  1. 約6600万年前、直径10km前後の小惑星がメキシコのユカタン半島にぶつかり、それが大量絶滅の引き金になったと考えられています。
  2. 手がかりは、世界中の同じ地層に多い金属「イリジウム」と、地下に埋もれた直径約180kmのクレーターと、衝突と絶滅がほぼ同時だったという年代測定です。
  3. インドの巨大な火山活動(デカン・トラップ)がどれだけ関わったかは、今も議論が続いています。

01 わかっていること恐竜は隕石で絶滅したって本当?

小惑星の衝突が大量絶滅の引き金になった、という考えは研究者の間でほぼ合意されています。ただし同じころインドで巨大な噴火が続いており、その影響の大きさはまだ決着していません。

白亜紀(はくあき)の終わり、約6600万年前に、海と陸の生き物の多くが一度に姿を消しました。鳥以外の恐竜もこのとき絶滅しました。

2010年には41人の研究者が世界中の地層の記録をまとめ、チクシュルーブの衝突が大量絶滅の引き金になったと結論しました [3]。衝突のあとの暗さと寒さが、化石に残る絶滅の起き方とよく合うためです。

なお「隕石」は地上に落ちた岩のことで、ぶつかってきた天体そのものは小惑星(または彗星)と呼ぶのが正確です。

02 どうやってわかったのか隕石説はどうやって確かめられたの?

①地層からの宇宙由来の金属、②その金属を運んだクレーターの発見、③衝突と絶滅が同じ時期だという精密な年代測定、の3段階で確かめられました。

わかっているアルバレスら(1980年、Science)[1]

イタリア・デンマーク・ニュージーランドの地層で、ちょうど絶滅の時期の薄い粘土の層に、イリジウムが普段の約30倍・160倍・20倍も含まれていました。著者らは、直径10±4kmの小惑星がぶつかったと考えました。

どうやって: イリジウムは地球の表面には少なく、隕石には多い金属です。遠く離れた3か所の地層で同じ時期に増えていたことから、宇宙から大量の物質が降ってきたと考えました。

わかっているヒルデブランドら(1995年、Nature)[2]

メキシコのユカタン半島の地下に埋もれた「チクシュルーブ・クレーター」の大きさを調べ、直径を約180kmと求めました。

どうやって: 地面の下の重さのちがい(重力のわずかな差)と、クレーターのふちに沿って並ぶ泉の穴(セノーテ)の位置から、埋もれたクレーターの形を描きました。

わかっているシュルテら(2010年、Science)[3]

衝突でとび散った物質を含む層は、世界中で1枚だけ、絶滅の境目に見つかりました。その成分はチクシュルーブの衝突と結びついていました。

どうやって: 世界各地の地層の記録を41人の研究者が集めて比べ、絶滅が始まった位置と衝突の層の位置が合うかを確かめました。

わかっているレンネら(2013年、Science)[4]

白亜紀の終わりの境目・大量絶滅・チクシュルーブの衝突は、3万2000年以内のずれで同時に起きていたことがわかりました。

どうやって: 岩石に含まれるアルゴンの量から年代を精密に測る方法(アルゴン年代測定)で、衝突と境目の地層に関わる岩石の年代を測りました。

有力な仮説チアレンザら(2020年、PNAS)[7]

小惑星の衝突は長い冬をもたらし、恐竜がすめる場所を世界中で大きく減らしました。一方、火山の二酸化炭素による温暖化は、すめる場所をむしろ増やす結果でした。

どうやって: 恐竜の化石が見つかる場所のデータと、気候のシミュレーションを組み合わせ、衝突と噴火のそれぞれのあとで恐竜がすめた場所を計算しました。

03 数字と例えでいうと数字にするとどれくらい?

小惑星は富士山の約2.6倍にあたる直径10km前後、クレーターは直径約180kmです。衝突と絶滅のずれは3万2000年以内で、6600万年という時間から見るとほぼ同時です。

項目値身近な例えでいうと
絶滅の時期約6600万年前 [5][7]地球の歴史46億年を1年にすると、12月26日の夕方
小惑星の大きさ(見積もり)直径10±4km [1]10kmは富士山(3776m)の約2.6倍の高さ
クレーターの直径約180km [2]東京から名古屋までの直線距離(約260km)の7割ほど
地層のイリジウムの増え方普段の約20〜160倍 [1]同じ時期の層だけが、遠く離れた3か所でそろって多い
衝突と絶滅の時間のずれ3万2000年以内 [4]6600万年の約2000分の1。時計で言えば1日のうち40秒ほど
デカン・トラップの溶岩9割以上が100万年未満に噴出、約75%は境目のあと [6]噴火は衝突の前から後まで続いていた

04 まだわかっていないことまだ議論が続いているのは何?

インドの巨大な噴火(デカン・トラップ)が絶滅にどれだけ効いたのか、まだ決着していません。噴火の時期の測り方によって、答えが分かれています。

05関連する記事

06よくある質問

恐竜は隕石が直接当たって死んだの?

直接当たって死んだのは、ぶつかった場所の近くの生き物だけと考えられています。世界中に広がったのは、舞い上がったちりやすすで日光がさえぎられ、暗く寒くなったことによる影響だと考えられています。

恐竜は全部絶滅したの?

鳥以外の恐竜は絶滅しました。ただ、鳥は恐竜の一つのグループから進化した子孫なので、恐竜の系統は鳥として今も続いている、と考えるのが研究者の主流です。

火山説はまちがいなの?

まちがいとは言えません。インドのデカン・トラップの噴火は衝突の前後に実際に起きており、どれだけ絶滅に効いたのかが議論されています。衝突が引き金だった点はほぼ合意されています。

出典

  1. Alvarez, L. W., Alvarez, W., Asaro, F. & Michel, H. V. (1980). Extraterrestrial Cause for the Cretaceous-Tertiary Extinction. Science 208, 1095-1108. https://doi.org/10.1126/science.208.4448.1095
  2. Hildebrand, A. R. et al. (1995). Size and structure of the Chicxulub crater revealed by horizontal gravity gradients and cenotes. Nature 376, 415-417. https://doi.org/10.1038/376415a0
  3. Schulte, P. et al. (2010). The Chicxulub Asteroid Impact and Mass Extinction at the Cretaceous-Paleogene Boundary. Science 327, 1214-1218. https://doi.org/10.1126/science.1177265
  4. Renne, P. R. et al. (2013). Time Scales of Critical Events Around the Cretaceous-Paleogene Boundary. Science 339, 684-687. https://doi.org/10.1126/science.1230492
  5. Schoene, B. et al. (2019). U-Pb constraints on pulsed eruption of the Deccan Traps across the end-Cretaceous mass extinction. Science 363, 862-866. https://doi.org/10.1126/science.aau2422
  6. Sprain, C. J. et al. (2019). The eruptive tempo of Deccan volcanism in relation to the Cretaceous-Paleogene boundary. Science 363, 866-870. https://doi.org/10.1126/science.aav1446
  7. Chiarenza, A. A. et al. (2020). Asteroid impact, not volcanism, caused the end-Cretaceous dinosaur extinction. PNAS 117, 17084-17093. https://doi.org/10.1073/pnas.2006087117
  8. Hull, P. M. et al. (2020). On impact and volcanism across the Cretaceous-Paleogene boundary. Science 367, 266-272. https://doi.org/10.1126/science.aay5055