恐竜はなぜ絶滅したのか 隕石説はどうやって確かめられたか

恐竜(鳥を除く)が姿を消したのは、約6600万年前です。地球の歴史46億年を1年にすると、12月26日の夕方にあたります。原因が「宇宙から来た岩」だという考えは、1980年に1本の論文から始まり、40年以上かけて確かめられてきました。
3行でわかる
- 約6600万年前、直径10km前後の小惑星がメキシコのユカタン半島にぶつかり、それが大量絶滅の引き金になったと考えられています。
- 手がかりは、世界中の同じ地層に多い金属「イリジウム」と、地下に埋もれた直径約180kmのクレーターと、衝突と絶滅がほぼ同時だったという年代測定です。
- インドの巨大な火山活動(デカン・トラップ)がどれだけ関わったかは、今も議論が続いています。
01 わかっていること恐竜は隕石で絶滅したって本当?
小惑星の衝突が大量絶滅の引き金になった、という考えは研究者の間でほぼ合意されています。ただし同じころインドで巨大な噴火が続いており、その影響の大きさはまだ決着していません。
白亜紀(はくあき)の終わり、約6600万年前に、海と陸の生き物の多くが一度に姿を消しました。鳥以外の恐竜もこのとき絶滅しました。
2010年には41人の研究者が世界中の地層の記録をまとめ、チクシュルーブの衝突が大量絶滅の引き金になったと結論しました [3]。衝突のあとの暗さと寒さが、化石に残る絶滅の起き方とよく合うためです。
なお「隕石」は地上に落ちた岩のことで、ぶつかってきた天体そのものは小惑星(または彗星)と呼ぶのが正確です。
02 どうやってわかったのか隕石説はどうやって確かめられたの?
①地層からの宇宙由来の金属、②その金属を運んだクレーターの発見、③衝突と絶滅が同じ時期だという精密な年代測定、の3段階で確かめられました。
わかっているアルバレスら(1980年、Science)[1]
イタリア・デンマーク・ニュージーランドの地層で、ちょうど絶滅の時期の薄い粘土の層に、イリジウムが普段の約30倍・160倍・20倍も含まれていました。著者らは、直径10±4kmの小惑星がぶつかったと考えました。
どうやって: イリジウムは地球の表面には少なく、隕石には多い金属です。遠く離れた3か所の地層で同じ時期に増えていたことから、宇宙から大量の物質が降ってきたと考えました。
わかっているヒルデブランドら(1995年、Nature)[2]
メキシコのユカタン半島の地下に埋もれた「チクシュルーブ・クレーター」の大きさを調べ、直径を約180kmと求めました。
どうやって: 地面の下の重さのちがい(重力のわずかな差)と、クレーターのふちに沿って並ぶ泉の穴(セノーテ)の位置から、埋もれたクレーターの形を描きました。
わかっているシュルテら(2010年、Science)[3]
衝突でとび散った物質を含む層は、世界中で1枚だけ、絶滅の境目に見つかりました。その成分はチクシュルーブの衝突と結びついていました。
どうやって: 世界各地の地層の記録を41人の研究者が集めて比べ、絶滅が始まった位置と衝突の層の位置が合うかを確かめました。
わかっているレンネら(2013年、Science)[4]
白亜紀の終わりの境目・大量絶滅・チクシュルーブの衝突は、3万2000年以内のずれで同時に起きていたことがわかりました。
どうやって: 岩石に含まれるアルゴンの量から年代を精密に測る方法(アルゴン年代測定)で、衝突と境目の地層に関わる岩石の年代を測りました。
有力な仮説チアレンザら(2020年、PNAS)[7]
小惑星の衝突は長い冬をもたらし、恐竜がすめる場所を世界中で大きく減らしました。一方、火山の二酸化炭素による温暖化は、すめる場所をむしろ増やす結果でした。
どうやって: 恐竜の化石が見つかる場所のデータと、気候のシミュレーションを組み合わせ、衝突と噴火のそれぞれのあとで恐竜がすめた場所を計算しました。
03 数字と例えでいうと数字にするとどれくらい?
小惑星は富士山の約2.6倍にあたる直径10km前後、クレーターは直径約180kmです。衝突と絶滅のずれは3万2000年以内で、6600万年という時間から見るとほぼ同時です。
| 項目 | 値 | 身近な例えでいうと |
|---|---|---|
| 絶滅の時期 | 約6600万年前 [5][7] | 地球の歴史46億年を1年にすると、12月26日の夕方 |
| 小惑星の大きさ(見積もり) | 直径10±4km [1] | 10kmは富士山(3776m)の約2.6倍の高さ |
| クレーターの直径 | 約180km [2] | 東京から名古屋までの直線距離(約260km)の7割ほど |
| 地層のイリジウムの増え方 | 普段の約20〜160倍 [1] | 同じ時期の層だけが、遠く離れた3か所でそろって多い |
| 衝突と絶滅の時間のずれ | 3万2000年以内 [4] | 6600万年の約2000分の1。時計で言えば1日のうち40秒ほど |
| デカン・トラップの溶岩 | 9割以上が100万年未満に噴出、約75%は境目のあと [6] | 噴火は衝突の前から後まで続いていた |
04 まだわかっていないことまだ議論が続いているのは何?
インドの巨大な噴火(デカン・トラップ)が絶滅にどれだけ効いたのか、まだ決着していません。噴火の時期の測り方によって、答えが分かれています。
- 火山はどこまで関わったのか噴火の大きな山が衝突の数万年前に始まっていたとする研究があり、両方が環境を悪くしたという見方があります [5]。一方で、溶岩の大部分は衝突のあとに出たとする研究もあり [6]、噴火の時期と量の見積もりがまだそろっていません。
- 噴火のガスはいつ出たのか海の温度と炭素の記録からは、噴火のガスの多くは衝突より前に出終わっていて、絶滅と同時だったのは衝突だけだとする研究があります [8]。ガスが溶岩と同じ時期に出たのかどうかは、まだ確かめきれていません。
- なぜ鳥やほ乳類は生き残ったのか体の小ささ、食べ物の幅、すみかなどの候補が挙げられていますが、どの理由がどれだけ効いたのかはわかっていません。
05関連する記事
06よくある質問
恐竜は隕石が直接当たって死んだの?
直接当たって死んだのは、ぶつかった場所の近くの生き物だけと考えられています。世界中に広がったのは、舞い上がったちりやすすで日光がさえぎられ、暗く寒くなったことによる影響だと考えられています。
恐竜は全部絶滅したの?
鳥以外の恐竜は絶滅しました。ただ、鳥は恐竜の一つのグループから進化した子孫なので、恐竜の系統は鳥として今も続いている、と考えるのが研究者の主流です。
火山説はまちがいなの?
まちがいとは言えません。インドのデカン・トラップの噴火は衝突の前後に実際に起きており、どれだけ絶滅に効いたのかが議論されています。衝突が引き金だった点はほぼ合意されています。
出典
- Alvarez, L. W., Alvarez, W., Asaro, F. & Michel, H. V. (1980). Extraterrestrial Cause for the Cretaceous-Tertiary Extinction. Science 208, 1095-1108. https://doi.org/10.1126/science.208.4448.1095
- Hildebrand, A. R. et al. (1995). Size and structure of the Chicxulub crater revealed by horizontal gravity gradients and cenotes. Nature 376, 415-417. https://doi.org/10.1038/376415a0
- Schulte, P. et al. (2010). The Chicxulub Asteroid Impact and Mass Extinction at the Cretaceous-Paleogene Boundary. Science 327, 1214-1218. https://doi.org/10.1126/science.1177265
- Renne, P. R. et al. (2013). Time Scales of Critical Events Around the Cretaceous-Paleogene Boundary. Science 339, 684-687. https://doi.org/10.1126/science.1230492
- Schoene, B. et al. (2019). U-Pb constraints on pulsed eruption of the Deccan Traps across the end-Cretaceous mass extinction. Science 363, 862-866. https://doi.org/10.1126/science.aau2422
- Sprain, C. J. et al. (2019). The eruptive tempo of Deccan volcanism in relation to the Cretaceous-Paleogene boundary. Science 363, 866-870. https://doi.org/10.1126/science.aav1446
- Chiarenza, A. A. et al. (2020). Asteroid impact, not volcanism, caused the end-Cretaceous dinosaur extinction. PNAS 117, 17084-17093. https://doi.org/10.1073/pnas.2006087117
- Hull, P. M. et al. (2020). On impact and volcanism across the Cretaceous-Paleogene boundary. Science 367, 266-272. https://doi.org/10.1126/science.aay5055


