人類の起源

ヒトはいつアフリカを出たのか 化石とDNAでわかったこと

2026年10月28日更新・約8分で読めます

ジェベル・イルードで見つかったホモ・サピエンスの頭骨
Photo: Ryan Somma from Occoquan, USA / CC BY-SA 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査論文と博物館・研究機関の資料をAIが調べ、内容を確かめて整理しました(出典は末尾)。

「人類は20万年前に東アフリカで生まれ、6万年前ごろにアフリカを出た」。少し前まではこう教わることが多くありました。この10年ほどで、化石とDNAの両方から、話がもっと古く、もっと入り組んでいることがわかってきました。

3行でわかる

  1. モロッコのジェベル・イルードの化石から、ホモ・サピエンスは約31万5000年前にはアフリカにいたとわかった。
  2. イスラエルやギリシャには約18万〜21万年前のホモ・サピエンスの化石があり、外へ出たのは1回ではなかった。
  3. ただし、今のアフリカの外の人の祖先は、約5万年前ごろに1つの集団にまとまると、DNAから推定されている。

01 わかっていることヒトがアフリカを出たのはいつ?

一度ではなく何度も出ています。20万年前より前に外へ出た集団の化石もありますが、今のアフリカの外の人の祖先にあたる集団が広がったのは約5万年前ごろと考えられています。

ホモ・サピエンス(今の私たちと同じ種)は、アフリカで生まれました。これは化石とDNAの両方が示していて、研究者の間でほぼ一致しています。

わかってきたのは「出た」の中身です。早い時期に外へ出た集団の骨は見つかりますが、その人々が今の人の祖先になったとは限りません。

化石は「その時そこに誰かがいた」ことを示し、DNAは「今の人の祖先がどこを通ったか」を示します。この2つを分けて考えるのが大事です。

02 どうやってわかったのか化石とDNAで何がわかったの?

化石の年代測定は、ホモ・サピエンスの始まりと早い時期の外出を示しました。古い人骨のDNAは、今の人の祖先がいつ1つの集団だったかを示しました。

わかっているHublin ら/Richter ら(2017年、Nature)[1,2]

モロッコのジェベル・イルードの人骨と石器は約31万5000年前(誤差±3万4000年)。顔や歯は今の人に近く、頭の後ろの形はより古い特徴を残していた。

どうやって: 火で焼けた石器に残る光の量から年代を測る方法(熱ルミネッセンス法)で測った。歯の別の方法でも約28万6000年前と出た。

わかっているHershkovitz ら(2018年、Science)[3]

イスラエルのミスリヤ洞窟で見つかったホモ・サピエンスの上あごは、約17万7000〜19万4000年前のもの。それまでアフリカの外で最古とされた約9万〜12万年前の化石より古かった。

どうやって: 上あごと歯の形をほかの人類と比べ、見つかった地層と遺物の年代を測った。

有力な仮説Harvati ら(2019年、Nature)[4]

ギリシャのアピディマ洞窟の頭骨の1つは21万年前より古く、今の人と古い人類の特徴が混ざっていた。ここは早期のホモ・サピエンスの化石とする見方が示された。

どうやって: ゆがんだ頭骨をコンピューターの中で組み立て直し、ウランの放射線で年代を測った。かけらが少ないため、別の解釈をする研究者もいる。

わかっているSümer ら(2024年、Nature)/Iasi ら(2024年、Science)[5,6]

今のアフリカの外の人はみな、約4万5000〜4万9000年前のネアンデルタール人との交わりを共通して受け継いでいた。つまりその頃、祖先は1つの集団だった。

どうやって: ドイツのラニスで見つかった約4万5000年前の人骨と、チェコの人骨のDNAを読み、ネアンデルタール人由来のかけらの長さから時期を推定した。

Sümerらは、アフリカの外で見つかる5万年より古い人骨は「別の集団」の人々だろうと書いています。早い時期の旅は実際にあったが、今の人の祖先の流れとは別だった、という見方です。

03 数字と例えでいうと30万年前・5万年前ってどれくらい昔?

地球の歴史46億年を1年にすると、ホモ・サピエンスが現れたのは大みそかの23時24分ごろ、今の人の祖先がアフリカの外へ広がったのは23時54分ごろです。

できごと年代地球の歴史を1年にすると
ジェベル・イルードのホモ・サピエンス約31万5000年前 [1,2]大みそか 23時24分ごろ
ギリシャ・アピディマの頭骨21万年より前 [4]大みそか 23時36分より前
イスラエル・ミスリヤの上あご約17万7000〜19万4000年前 [3]大みそか 23時38〜40分ごろ
アフリカの外の人の祖先がまとまっていた頃約4万5000〜4万9000年前 [5]大みそか 23時54分ごろ

計算は、年代÷46億×1年(52万5600分)で出しました。たとえば31万5000年は約36分なので、真夜中の36分前で23時24分です。

04 まだわかっていないことまだ謎なのは何?

ホモ・サピエンスがアフリカのどこで生まれたのか、早く外へ出た集団がどうなったのかは、まだ決まっていません。

05関連する記事

06よくある質問

人類はみなアフリカ出身なのですか?

はい。ホモ・サピエンスはアフリカで生まれたことが、化石とDNAの両方から示されています。今のアフリカの外の人の祖先も、もとをたどるとアフリカの集団です。

アフリカを出たのは1回だけですか?

いいえ。20万年前より前の化石もアフリカの外で見つかっており、何度か外へ出ています。ただ、今のアフリカの外の人の祖先にあたる集団は、約5万年前ごろに1つにまとまると推定されています。

ホモ・サピエンスはいつ生まれたのですか?

モロッコのジェベル・イルードの化石から、約31万5000年前にはいたことがわかっています。それより前の始まりの時期は、まだはっきりしていません。

出典

  1. Hublin JJ, et al. (2017). New fossils from Jebel Irhoud, Morocco and the pan-African origin of Homo sapiens. Nature 546, 289-292. https://doi.org/10.1038/nature22336
  2. Richter D, et al. (2017). The age of the hominin fossils from Jebel Irhoud, Morocco, and the origins of the Middle Stone Age. Nature 546, 293-296. https://doi.org/10.1038/nature22335
  3. Hershkovitz I, et al. (2018). The earliest modern humans outside Africa. Science 359, 456-459. https://doi.org/10.1126/science.aap8369
  4. Harvati K, et al. (2019). Apidima Cave fossils provide earliest evidence of Homo sapiens in Eurasia. Nature 571, 500-504. https://doi.org/10.1038/s41586-019-1376-z
  5. Sümer AP, et al. (2025). Earliest modern human genomes constrain timing of Neanderthal admixture. Nature 638, 711-717. https://doi.org/10.1038/s41586-024-08420-x
  6. Iasi LNM, et al. (2024). Neanderthal ancestry through time: Insights from genomes of ancient and present-day humans. Science 386, eadq3010. https://doi.org/10.1126/science.adq3010