人類の起源

「ヒトはサルから進化した」は本当? チンパンジーとは共通の祖先から分かれた親戚

2026年10月28日更新・約8分で読めます

チンパンジーの肖像画(ヨス・スキッパース画)
Photo: Jos Schippers / Public domain / Wikimedia Commons
AIによる調査論文と博物館・研究機関の資料をAIが調べ、内容を確かめて整理しました(出典は末尾)。

「ヒトはサルから進化した」と聞いて、動物園のチンパンジーが少しずつヒトになった姿を思い浮かべる人もいるかもしれません。けれど、今のチンパンジーはヒトの祖先ではありません。ヒトとチンパンジーは、同じ祖先から別々の道を進んだ親戚どうしです。

3行でわかる

  1. 今生きているサルやチンパンジーから、ヒトが生まれたのではありません。
  2. ヒトとチンパンジーは、およそ800万〜600万年前に生きていた共通の祖先から分かれました。チンパンジーもその後、別の道を進化してきました。
  3. 「サル(霊長類)の仲間から分かれた」という意味なら正しく、ヒトとアカゲザル(ニホンザルと同じマカクの仲間)も約2900万年前の共通の祖先でつながっています。

01 わかっていることヒトは今のサルから進化したの?

いいえ。ヒトは今いるサルやチンパンジーの子孫ではありません。ヒトとチンパンジーは、約800万〜600万年前に生きていた共通の祖先から分かれた親戚です。

アメリカのスミソニアン自然史博物館は、「ヒトはサルや、今生きているほかの霊長類の子孫ではない」とはっきり書いています [5]。そのうえで、ヒトはチンパンジーと共通の祖先(どちらにとってもご先祖にあたる生き物)を持つ、と説明しています。

家系図で言えば、チンパンジーは「おじいさん」ではなく「いとこ」です。同じ祖父母から、いとこと自分が別々に生まれたのと同じ形です。

その共通の祖先は、今のチンパンジーともヒトとも違う姿をしていたと考えられています。分かれた後、チンパンジーの側も約600万年以上かけて変わってきました。

02 どうやってわかったのか親戚だとどうやってわかったの?

DNAの違いを数える方法と、化石を年代順に並べる方法の両方でわかっています。どちらも、ヒトとチンパンジーが数百万年前に分かれたことを示しています。

わかっているチンパンジー・ゲノム解読チーム(2005年、Nature)[1]

ヒトとチンパンジーのゲノムを比べると、分かれてから積み重なった違いは、1文字の置き換わりが約3500万か所、文字の抜けや入りが約500万か所でした。並べて比べられる部分では、DNAの文字の約1.2%が違います。抜けや入りの分まで数えると、それとは別に約3%の違いがあります。

どうやって: チンパンジーのゲノム(全遺伝情報)を読み、ヒトのゲノムと1文字ずつ並べて比べました。違いの多くは、体の働きにほとんど影響しない変化でした。

わかっているTimeTree 5(クマーら、2022年、Molecular Biology and Evolution)[2]

多くの研究をまとめると、ヒトとチンパンジーが分かれたのは約645万年前(95%の範囲で約616万〜675万年前)です。ヒトとアカゲザル(ニホンザルに近いサル)は約2890万年前です。

どうやって: 分かれた年代を推定した論文を集め、生き物どうしの分岐の年代をまとめて計算しているデータベースです。値は2026年10月28日に引いたものです。

有力な仮説ブリュネら(2002年、Nature)[3]

アフリカのチャドで、ヒトの系統の初期の仲間とされる化石(サヘラントロプス・チャデンシス)が見つかりました。年代は600万〜700万年前とされています。

どうやって: ほぼ完全な頭骨とあごの化石6点を調べ、一緒に出た動物の化石から年代を推定しました。東アフリカの大地溝帯から2500キロも離れた場所での発見でした。ヒトの系統に入れてよいかには異論もあります。

有力な仮説ムアジャニら(2016年、PNAS)[4]

ヒトとチンパンジーのDNAが分かれ始めた時期(遺伝的な分岐)は、約1210万年前と推定されました。ヒトとゴリラは約1510万年前です。

どうやって: 霊長類10種のゲノムで、変化の速さが種によって違うことを確かめ、時計として安定した種類の変化だけを使いました。DNAの分かれは、集団が分かれた時期より古く出るのがふつうで、これだけで「分かれた年」は決まりません。

03 数字と例えでいうとサルの仲間とは、何年前に分かれたの?

ヒトに近い順に、チンパンジー約645万年前、ゴリラ約872万年前、オランウータン約1563万年前、アカゲザル約2890万年前です(TimeTree)。研究によって幅があります。

項目値身近な例えでいうと
ヒトとチンパンジー約645万年前(約616万〜675万年前)[2]1年を1ミリにすると約6.5キロ。大人が歩いて1時間半ほど
ヒトとゴリラ約872万年前 [2]同じく約8.7キロ
ヒトとオランウータン約1563万年前 [2]約15.6キロ
ヒトとアカゲザル(ニホンザルに近い)約2890万年前 [2]約28.9キロ。チンパンジーの4倍以上昔
ヒトとチンパンジーのDNAの違い(割合)1文字の置き換わりで約1.2%。抜けや入りを含めると、さらに約3% [1]1000文字の文章なら、約12文字が別の文字になっている
ヒトとチンパンジーのゲノムの違い(数)1文字の置き換わり約3500万か所 [1]分かれた後、両方の側でそれぞれ積み重なった違い
歩く時間は時速4.3キロとして計算しました。分かれた年代は、TimeTree の値と、博物館がまとめた「約800万〜600万年前」[5] のように、資料によって幅があります。

04 まだわかっていないことヒトの起源で、まだわかっていないことは?

ヒトとチンパンジーが分かれた正確な年代と、共通の祖先がどんな姿だったかは、まだわかっていません。その頃の化石がとても少ないからです。

05関連する記事

06よくある質問

ヒトとチンパンジーのDNAは何%違うの?

並べて比べられる部分では、1文字の置き換わりで約1.2%違います。文字の抜けや入りまで数えると、それとは別に約3%の違いがあります。「約99%同じ」と言われるのは、置き換わりだけを数えた場合です。

チンパンジーはこの先ヒトに進化するの?

しません。チンパンジーはヒトの途中の姿ではなく、共通の祖先から別の道を進んだ親戚です。進化には決まったゴールがなく、チンパンジーもその環境で子を残してきた結果として今の姿になっています。

ヒトとチンパンジーはいつ分かれたの?

およそ800万〜600万年前とされます。多くの研究をまとめたTimeTreeでは約645万年前です。DNAの時計の読み方で推定に幅があります。

「ヒトはサルから進化した」はまったくの誤り?

今いるサルから進化した、という意味なら誤りです。ヒトもサルも霊長類という同じ仲間で、ずっと昔の共通の祖先から分かれた、という意味なら正しい言い方になります。

出典

  1. Chimpanzee Sequencing and Analysis Consortium (2005). Initial sequence of the chimpanzee genome and comparison with the human genome. Nature 437, 69-87. https://doi.org/10.1038/nature04072
  2. Kumar S, Suleski M, Craig JM, et al. (2022). TimeTree 5: An Expanded Resource for Species Divergence Times. Molecular Biology and Evolution 39(8), msac174. https://doi.org/10.1093/molbev/msac174
  3. Brunet M, Guy F, Pilbeam D, et al. (2002). A new hominid from the Upper Miocene of Chad, Central Africa. Nature 418, 145-151. https://doi.org/10.1038/nature00879
  4. Moorjani P, Amorim CEG, Arndt PF, Przeworski M (2016). Variation in the molecular clock of primates. Proceedings of the National Academy of Sciences 113(38), 10607-10612. https://doi.org/10.1073/pnas.1600374113
  5. Smithsonian National Museum of Natural History, Human Origins Program. Frequently Asked Questions. https://humanorigins.si.edu/education/frequently-asked-questions