心と行動の起源

犬はいつ、どうやって人の友になったのか オオカミからの家畜化と古代DNA

2026年10月28日更新・約6分で読めます

犬の祖先に近いハイイロオオカミ
Photo: Wilfredor / CC0 / Wikimedia Commons
AIによる調査論文と博物館・研究機関の資料をAIが調べ、内容を確かめて整理しました(出典は末尾)。

犬は、人が最初に家畜にした動物です。ただ、それがいつ、どこで、どうやって起きたのかは、古い骨のDNAを読めるようになった今も、研究者の間で意見が分かれています。

3行でわかる

  1. 犬の祖先は灰色オオカミの仲間ですが、今いるオオカミとは別の、まだ見つかっていないオオカミの集団から生まれたと考えられています。
  2. 古代DNAによると、約1万1000年前までに犬は少なくとも5つの系統に分かれていました。家畜化はそれより前の旧石器時代に始まっていました。
  3. 時期(約2万〜4万年前)と場所(シベリア、東アジア、ヨーロッパなど)、1回か2回かは、まだ決着していません。

01 わかっていること犬はオオカミから生まれたの?

はい。犬はオオカミの仲間から生まれた、人が最初に飼いならした動物です。ただし今のオオカミが祖先なのではなく、今のオオカミとは別の古いオオカミの集団から分かれたと考えられています。

家畜化(野生の動物が、人のそばで暮らす中で、姿や性質の変わった集団になること)は、旧石器時代に始まりました。約1万1000年前には、犬はすでにいくつもの系統に分かれていたほどです。

今のオオカミと犬は「親子」ではなく「いとこ」に近い関係です。そのため、今のオオカミを調べても、犬の祖先がどこにいたのかはわかりません。

02 どうやってわかったのかどうやって調べたの?

遺跡から出た古い犬やオオカミの骨からDNAを取り出して読み、今の犬やオオカミ、そして同じ時代の人のDNAと比べました。DNAには、集団がいつ分かれ、どこで混ざったかの跡が残っています。

わかっているベルイストレームら(2020年、Science)[1]

古代の犬27匹のゲノム(全遺伝情報)を読みました。すべての犬は今のオオカミとは別の共通の祖先をもち、約1万1000年前までに少なくとも5つの系統に分かれていました。

どうやって: ヨーロッパ、中東、シベリアなどの遺跡の犬の骨からDNAを読み、同じ地域の古代の人のDNAと比べました。犬の移動の多くは人の移動と重なっていましたが、重ならない部分もありました。

有力な仮説フランツら(2016年、Science)[2]

今の犬は、東アジア系と西ユーラシア系に大きく分かれていました。分かれた時期(約1万4000〜6400年前)が、両地域で犬の骨が出始める時期と同じか後だったため、東と西で別々に2回家畜化された可能性があるとしました。

どうやって: 古代の犬59匹の遺伝子と、アイルランドで見つかった約4800年前の犬の全ゲノムを読み、今の犬と比べました。

有力な仮説ボティゲら(2017年、Nature Communications)[3]

ドイツの新石器時代の犬2匹のゲノムからは、家畜化が2回あった証拠は見つかりませんでした。家畜化の時期は約2万〜4万年前と推定しました。

どうやって: 年代のわかる古い犬のDNAを使って、遺伝子が変わる速さを測り直し、犬とオオカミが分かれた時期を計算しました。同じ問いでも、研究によって結論が違う例です。

有力な仮説ペリら(2021年、PNAS)[4]

人と犬の系統の分かれ方を比べると、よく一致していました。犬は約2万3000年前までにシベリアで家畜化され、約1万5000年前から人と一緒にアメリカ大陸へ渡った可能性があるとしました。

どうやって: シベリア、ベーリング地域、北米の人と犬の遺伝子の研究結果を並べて比べました。氷河期の寒さで、人もオオカミも同じ地域に閉じこめられていた時期と重なります。

わかっていないベルイストレームら(2022年、Nature)[5]

過去10万年分のオオカミ72匹のゲノムを読むと、犬は西より東のユーラシアの古いオオカミに近いとわかりました。一方、中東やアフリカの犬は、祖先の最大で半分を別のオオカミの集団から受け継いでいました。

どうやって: ヨーロッパ、シベリア、北米の古いオオカミの骨からDNAを読みました。調べたどのオオカミも犬の祖先とぴったりは一致せず、祖先の集団はまだ見つかっていません。

03 数字と例えでいうとどれくらい昔の話なの?

家畜化の推定は約2万年前から4万年前まで幅があります。どの説でも、犬が5つ以上の系統に分かれていた約1万1000年前より前です。人の世代でいうと、数百から千数百世代前の出来事です。

項目値身近な例えでいうと
家畜化の時期の推定(ドイツの古代犬から)約2万〜4万年前 [3]1世代25年として800〜1600世代前
シベリアで家畜化されたとする説約2万3000年前まで [4]1世代25年として約920世代前
犬が5つ以上の系統に分かれていた時期約1万1000年前まで [1]1世代25年として約440世代前
東アジア系と西ユーラシア系が分かれた時期約1万4000〜6400年前 [2]推定の幅だけで7000年以上ある
犬と一緒にアメリカ大陸へ渡った時期約1万5000年前から [4]1世代25年として約600世代前

04 まだわかっていないことまだ謎なのは何?

いつ、どこで、何回家畜化されたかは、どれも決着していません。祖先のオオカミの集団もまだ見つかっていません。人とオオカミがどのように近づいたのかも、DNAだけでは決められません。

05関連する記事

06よくある質問

犬の祖先は今のオオカミなの?

いいえ。犬と今の灰色オオカミは、共通の祖先から分かれた「いとこ」に近い関係です。古いオオカミのDNAを調べても、犬の祖先とぴったり一致する集団はまだ見つかっていません。

犬は何年前から人と暮らしているの?

研究によって約2万年前から4万年前まで幅があります。2021年の研究は、約2万3000年前までにシベリアで家畜化されたという説を出しています。約1万1000年前には、犬はすでに5つ以上の系統に分かれていました。

猫と犬はどちらが先に人と暮らし始めたの?

犬のほうが先です。犬は人が最初に家畜にした動物で、旧石器時代から人のそばにいたと考えられています。

出典

  1. Bergström, A. et al. (2020). Origins and genetic legacy of prehistoric dogs. Science 370, 557-564. https://doi.org/10.1126/science.aba9572
  2. Frantz, L. A. F. et al. (2016). Genomic and archaeological evidence suggest a dual origin of domestic dogs. Science 352, 1228-1231. https://doi.org/10.1126/science.aaf3161
  3. Botigué, L. R. et al. (2017). Ancient European dog genomes reveal continuity since the Early Neolithic. Nature Communications 8, 16082. https://doi.org/10.1038/ncomms16082
  4. Perri, A. R. et al. (2021). Dog domestication and the dual dispersal of people and dogs into the Americas. PNAS 118, e2010083118. https://doi.org/10.1073/pnas.2010083118
  5. Bergström, A. et al. (2022). Grey wolf genomic history reveals a dual ancestry of dogs. Nature 607, 313-320. https://doi.org/10.1038/s41586-022-04824-9