都会で進化する生き物 身近で見られる例

進化は何万年もかかる、と思われがちです。でも、街ができてからの数十年〜200年ほどの間に、生き物の性質が変わった例がいくつも見つかっています。公園のシロツメクサも、その一つです。
3行でわかる
- 都市は気温・乾き方・天敵・地面の質がまわりと違うため、そこで多く子を残せる性質が変わり、生き物の集団が変化することがあります。
- 世界160都市のシロツメクサを調べた研究では、47%の都市で、街の中心と郊外とで性質の割合に差がありました。
- 黒いガが増えて減ったオオシモフリエダシャクは、鳥に見つかりやすいかどうかで説明できることが、大規模な野外実験で確かめられています。
01 わかっていること都会でも進化は起きているの?
起きています。都市でよく子を残せる性質を持つ個体が増え、集団の遺伝子の割合が変わった例が、植物・昆虫・トカゲなどで報告されています。
都市は、まわりの森や草地とくらべて暑く、乾きやすく、地面はコンクリートで、天敵の顔ぶれも違います。そうした条件の中では、多く子を残せる性質が変わります。
世代を重ねると、その性質を持つ個体の割合が増えていきます。これが自然選択(生き残って子を残しやすい性質が広まること)による進化です。
2017年のまとめの論文では、微生物・植物・動物で、都市が進化に影響している証拠が集められています [6]。
02 どうやってわかったのかどんな生き物で確かめられたの?
シロツメクサ、オオシモフリエダシャク(ガの一種)、プエルトリコのトカゲ、フランスの街路樹の根元に生える草などで、遺伝で決まる性質の変化が確かめられています。
わかっているサンタンジェロら(2022年、Science)[1]
世界160都市・6169か所のシロツメクサ11万19株を調べると、47%の都市で、虫などに食べられにくくする化学的な守りを持つ株の割合が、街の中心から郊外にかけて変わっていました。26都市の2074株のゲノムからは、この差は偶然より自然選択で説明するのが最もよく合いました。
どうやって: 世界中の研究者が同じ方法で株を集め、守りを持つかどうかを調べました。差の大きさは、都市ごとの乾きやすさと緑の量の違いで説明できました。
わかっているファント・ホフら(2016年、Nature)[2]
イギリスのオオシモフリエダシャクの黒い型は、cortexという遺伝子の中に「動く遺伝子(トランスポゾン)」が入りこんでできたもので、入りこんだのは1819年ごろと推定されました。
どうやって: 黒い型と白い型のDNAを比べて違う場所を絞り込み、黒い型のDNAがどれだけ組み換わっているかから、変化の起きた年を逆算しました。
わかっているクックら(2012年、Biology Letters)[3]
6年間で4864匹のガを放した実験で、鳥は黒い型をより多く食べていました。その差は、すすの少なくなったイギリスで黒い型が急に減ったことを説明できる大きさでした。
どうやって: 亡くなった研究者マジェラスが残した野外実験のデータを、ほかの研究者がまとめて発表しました。ガを木に止まらせ、鳥に食べられた数を記録しました。
わかっているウィンチェルら(2016年、Evolution)[4]
プエルトリコの3つの街のトカゲ(アノール)は、近くの森のトカゲより、体に比べて足が長く、指の裏のすべり止めのうろこが多くなっていました。
どうやって: 街と森のトカゲの体を測り、止まっている場所(壁や柱など)を観察しました。同じ条件で育てた子でも差が残り、遺伝による違いの可能性が示されました。
わかっているシェプトゥら(2008年、PNAS)[5]
フランス・モンペリエの街路樹の根元に生える草(キク科の一種)では、風で遠くへ飛ぶ種を作る割合が、まわりの草地の集団より低くなっていました。
どうやって: 飛ぶ種はコンクリートに落ちやすく、根元の土に残る確率が飛ばない種より55%低いことを確かめ、同じ環境で育てて割合を比べました。計算では5〜12世代ほどの変化と見積もられています。
03 数字と例えでいうとどれくらい速く変わるの?
数世代〜200年ほどで変化した例があります。オオシモフリエダシャクの黒い型は1819年ごろに生まれ、工場のすすが多い時代に増え、空気がきれいになると減りました。
| 項目 | 値 | 身近な例えでいうと |
|---|---|---|
| シロツメクサの調査規模 | 160都市・11万19株 [1] | 1都市あたり平均約690株 |
| 街と郊外で差があった都市 | 47% [1] | 2都市に1つくらい |
| オオシモフリエダシャクの黒い型が生まれた年 | 1819年ごろ [2] | 今から約200年前。江戸時代の後半 |
| ガを放した実験 | 6年間で4864匹 [3] | これまでで最大規模の同じ種類の実験 |
| 街路樹の根元の草の変化 | 5〜12世代ほど [5] | 人の世代(25年)に置きかえると125〜300年分 |
04 まだわかっていないことまだわかっていないことは?
都市の何が選択の原因なのかは、生き物ごとにまだはっきりしません。都市どうしで同じ向きに変わる程度もばらつきがあります。
- 都市の何が効いているのかシロツメクサでは乾きやすさと緑の量が効いていましたが、都市ごとに差の強さは違いました [1]。熱・光・汚れ・天敵など、どれがどれだけ効くのかは生き物ごとに調べる必要があります [6]。
- 生き物が守りを持つ理由シロツメクサの守りは、食べられにくさだけでなく寒さや乾きへの強さにも関わるとされ、都市でどちらが効いたのかは都市によって違う可能性があります [1]。
- この変化は続くのか街は今も変わり続けています。オオシモフリエダシャクのように、環境が戻れば割合も戻る例があり、今見えている差がこの先も残るかはわかりません [3]。
05関連する記事
06よくある質問
身近で観察できる都市の進化はある?
シロツメクサが身近です。研究で調べた化学的な守りは見た目ではわかりませんが、街の中心の公園と郊外の草地とで、同じ草が育つ場所の違い(日当たり・乾き・踏まれ方)を比べることはできます。研究者は世界中の人と同じ方法で株を集めて調べました。
オオシモフリエダシャクの話は作り話だと聞いたけど?
昔の実験の方法に批判が出たことはあります。そのため改めて6年間・4864匹の野外実験が行われ、鳥が黒い型を多く食べていたことが確かめられました。黒い型の原因の遺伝子も2016年に特定されています。
都会の生き物は「都会に合わせようとして」変わったの?
そうではありません。都会でたまたま多く子を残せた性質の個体が増えた結果、集団の性質が変わったと考えられています。生き物が目的を持って変わるわけではありません。
出典
- Santangelo, J. S. et al. (2022). Global urban environmental change drives adaptation in white clover. Science 375, 1275-1281. https://doi.org/10.1126/science.abk0989
- Van't Hof, A. E. et al. (2016). The industrial melanism mutation in British peppered moths is a transposable element. Nature 534, 102-105. https://doi.org/10.1038/nature17951
- Cook, L. M., Grant, B. S., Saccheri, I. J. & Mallet, J. (2012). Selective bird predation on the peppered moth: the last experiment of Michael Majerus. Biology Letters 8, 609-612. https://doi.org/10.1098/rsbl.2011.1136
- Winchell, K. M. et al. (2016). Phenotypic shifts in urban areas in the tropical lizard Anolis cristatellus. Evolution 70, 1009-1022. https://doi.org/10.1111/evo.12925
- Cheptou, P.-O. et al. (2008). Rapid evolution of seed dispersal in an urban environment in the weed Crepis sancta. PNAS 105, 3796-3799. https://doi.org/10.1073/pnas.0708446105
- Johnson, M. T. J. & Munshi-South, J. (2017). Evolution of life in urban environments. Science 358, eaam8327. https://doi.org/10.1126/science.aam8327


