自然選択は本当に起きている? ガラパゴスのフィンチで40年観察してわかったこと

進化は何万年もかかるので、目では見られない。そう思われがちです。ところがガラパゴス諸島の小さな島で、鳥のくちばしの大きさが数年のうちに変わる様子が、実際に測られました。ピーターとローズマリーのグラント夫妻が、約40年にわたって続けた観察です。
3行でわかる
- 自然選択とは、まわりの環境で生き残りやすい特徴を持つ個体が多く子を残し、その特徴が集団に広まることです。
- グラント夫妻は、ダフネ・メジャー島のフィンチを1羽ずつ測り続け、日照りのたびにくちばしの平均の大きさが変わるのを確かめました。
- 変化の向きは毎回同じではありませんでした。環境がどう変わるかで、選ばれる特徴も変わります。
01 わかっていること自然選択は本当に目に見えるの?
はい。ダフネ・メジャー島では、日照りで食べ物が変わるたびに、生き残る鳥のくちばしの大きさが偏り、次の世代の平均も変わりました。数年単位で測れる変化です。
ダーウィンフィンチは、ガラパゴス諸島にいる小鳥の仲間です。種によってくちばしの形が大きく違い、食べる種(たね)も違います。
自然選択では、生き物が「変わろうとする」わけではありません。たまたま環境に合った特徴を持つ個体が多く生き残って子を残し、その結果として集団の平均が変わります。
くちばしの大きさは親から子へよく受け継がれます [3]。だから、生き残った鳥の特徴が、次の世代にも現れます。
02 どうやってわかったのかどうやって確かめたの?
島のフィンチを1羽ずつ見分けてくちばしの大きさを測り、生き残りと子どもを毎年記録しました。日照りの前後を比べることで、選ばれた特徴がわかりました。
わかっているボーグとグラント(1981年、Science)[1]
1977年の日照りで、ガラパゴスフィンチ(中型の地上フィンチ)の生き残りは偶然ではありませんでした。体が大きく、特にくちばしの大きいオスがよく生き残りました。
どうやって: 日照りで小さい種が減り、大きくて固い種が残りました。大きなくちばしの鳥はそれを割れたためと考えられます。選択の強さは、脊椎動物でそれまでに測られた中で最大でした。
わかっているグラントとグラント(2006年、Science)[3]
1982年に大型のオオガラパゴスフィンチが島に住みつきました。22年後の日照りで、2種が同じ食べ物を取り合った結果、今度は小さいくちばしの中型フィンチが多く生き残りました。
どうやって: 2003年と2004年の日照りで、2種がいっしょに食べ物を大きく減らしました。中型フィンチは大きな種をあまり食べられなくなり、小さいくちばしの個体が有利になりました [7]。この変化は33年の調査で最も強いもので、くちばしの遺伝しやすさから予想された値に近いものでした。
わかっているグラントとグラント(2002年、Science)[2]
1972年から2001年の30年間で、2種のフィンチの体とくちばしの大きさは、何度も向きを変えて変わりました。30年後の姿は、始めた時点では予想できないものでした。
どうやって: 毎年の測定を積み重ねました。自然選択はよく起きていましたが、向きは雨の量や食べ物で変わり、一方向に進み続けるものではありませんでした。
わかっているラミシャネイら(2015年、Nature)[4]
くちばしの形には、ALX1という遺伝子のまわりの約24万文字分の領域が強く関わっていることがわかりました。
どうやって: ダーウィンフィンチ全種をふくむ120羽のゲノム(遺伝情報の全体)を読み、くちばしの形と遺伝子の違いを比べました。
有力な仮説ラミシャネイら(2018年、Science)[5]
100キロ以上離れた島から来た1羽のオスと島のメスの子孫が、3世代でほかの集団と交わらない新しい系統になりました。
どうやって: 遺伝子を読んで、移ってきたオスの出身を確かめました。著者らはこの系統を新しい種が生まれた例としていますが、今後も別の種として続くかは観察中です。
03 数字と例えでいうとどれくらいの期間、どれくらい変わったの?
観察は1970年代から約40年続きました。くちばしの平均は、数年のうちに目に見えて変わりました。
| 項目 | 値 | 身近な例えでいうと |
|---|---|---|
| 観察した期間 | 約40年(1970年代から)[6] | 中学1年生が50代になるまで、毎年同じ島に通った長さ |
| 大型フィンチが島に来てから、くちばしが変わるまで | 22年 [3] | 生まれた子が大人になるくらいの時間で、目に見える変化が起きた |
| 新しい系統ができるまで | 3世代 [5] | ふつうは数百世代かかるとされる隔離が、祖父母から孫までの間に |
| ゲノムを読んだ鳥の数 | 120羽 [4] | ダーウィンフィンチの全種と近い仲間2種 |
1977年の日照りで何羽が死んだか、くちばしが何ミリ変わったかは、解説資料によって数字が違います。原論文の本文で確かめられなかったため、この記事には書いていません。
04 まだわかっていないことまだわかっていないことは?
自然選択が起きることは確かめられましたが、長い目で見てどちらへ変わるかは予想できません。小さな変化の積み重ねで種が分かれる過程も、すべてはわかっていません。
- 長い期間でどう変わるのかグラント夫妻自身が、短い期間の変化は予想できても、長い期間の変化は環境しだいで予想できないと書いています [2]。
- 交雑で生まれた系統は種として続くのか3世代で別の系統になった例は、まだ観察が続いている段階です [5]。
- くちばし以外の特徴の遺伝子ALX1のようにくちばしに関わる遺伝子は見つかりましたが [4]、体の大きさや歌などに関わる遺伝子のしくみは、まだすべてはわかっていません。
05関連する記事
06よくある質問
自然選択とは何?
環境の中で生き残りやすい特徴を持つ個体が多く子を残し、その特徴が集団に広まることです。生き物が目的を持って変わるのではなく、結果として集団の平均が変わります。
進化は目で見られるの?
見られることがあります。ガラパゴスのダフネ・メジャー島では、日照りの前後で、フィンチのくちばしの平均の大きさが変わったことが測られました。
フィンチのくちばしはいつも大きくなったの?
いいえ。1977年の日照りでは大きいくちばしが有利でしたが、2000年代の日照りでは小さいくちばしが有利でした。環境によって、選ばれる向きは変わります。
ダーウィンもフィンチで進化を考えたの?
ダーウィンの名前がついた鳥ですが、目の前で自然選択を何十年も測ったのは、1970年代から続くグラント夫妻の研究です。
出典
- Boag, P. T. & Grant, P. R. (1981). Intense natural selection in a population of Darwin’s finches (Geospizinae) in the Galápagos. Science 214, 82-85. https://doi.org/10.1126/science.214.4516.82
- Grant, P. R. & Grant, B. R. (2002). Unpredictable evolution in a 30-year study of Darwin’s finches. Science 296, 707-711. https://doi.org/10.1126/science.1070315
- Grant, P. R. & Grant, B. R. (2006). Evolution of character displacement in Darwin’s finches. Science 313, 224-226. https://doi.org/10.1126/science.1128374
- Lamichhaney, S. et al. (2015). Evolution of Darwin’s finches and their beaks revealed by genome sequencing. Nature 518, 371-375. https://doi.org/10.1038/nature14181
- Lamichhaney, S. et al. (2018). Rapid hybrid speciation in Darwin’s finches. Science 359, 224-228. https://doi.org/10.1126/science.aao4593
- Princeton University Press. 40 Years of Evolution: Darwin’s Finches on Daphne Major Island (Grant, P. R. & Grant, B. R., 2014). https://press.princeton.edu/books/hardcover/9780691160467/40-years-of-evolution
- Nature News (2006). Darwin’s finches evolve before our eyes. https://www.nature.com/news/2006/060710/full/news060710-11.html


