目のような複雑なものはどうやってできたのか、光を感じる細胞からカメラ眼まで

ダーウィン自身も、目ほど複雑なものが自然選択でできたと考えるのは難しく見える、と書いていました。部品が1つ欠けても見えない目が、どうして少しずつできたのか。今では、光を感じる細胞からレンズのある目まで、途中の段階が1つずつ埋まってきています [5]。
3行でわかる
- 目は一度にできたのではありません。光を感じる細胞の平たい集まりが、くぼみ、穴、レンズのある目へと、小さな変化を重ねてできたと考えられています。
- ニルソンとペルガー(1994年)は、少しずつ良くなる道筋をたどれば、平らな光センサーからレンズのある目まで数十万年で足りると計算しました。
- 目のもとになる光センサーの分子(オプシン)は動物に広く共通で、最初のオプシンから見る目までは約1億7000万年、カンブリア紀の初め(約5億3000万年前)までにほぼそろったと推定されています。
01 わかっていること目のような複雑なものは、どうやってできたの?
途中の段階の目も、それぞれ役に立ったからです。光の有無がわかる、方向がわかる、ぼんやり形がわかる、くっきり見える。どの段階も、持っていない個体より有利になり得ました。
目の始まりは、光を受けると反応する分子です。動物の目では、オプシン(光を受け取るたんぱく質)がその役をしています。オプシンを持つ細胞が集まれば、明るいか暗いかがわかります。
その集まりが少しくぼむと、影の来る方向がわかります。くぼみが深くなって口が狭まると、ピンホールカメラのようにぼんやりと形が映ります。口に透明なかたまりができればレンズになり、くっきり見えます。
ポイントは、どの途中の形も「半分の目」ではなく、その時点で使える目だったことです。今の動物にも、光を感じるだけの目、くぼんだ目、穴だけの目を持つものがいます。
02 どうやってわかったのかどうやって確かめたの?
目の形を少しずつ変える計算、今いる動物の目の比較、オプシン遺伝子の家系図づくり、目を作る遺伝子の実験で調べられています。
わかっているニルソンとペルガー(1994年、Proceedings of the Royal Society B)[1]
光を感じる平らな細胞の集まりが、見える情報が少しずつ増える方向へ変わり続けると、レンズのある目になります。わざと遅めの条件で計算しても、かかる時間は数十万年でした。
どうやって: 目の形を小さな段階に分け、各段階で必要な変化を、不利な方に見積もって世代の数に直しました。目の形(光学のしくみ)だけを扱った計算で、神経や脳の変化は入っていません。
わかっているニルソン(2013年、Visual Neuroscience)[2]
光の有無を感じる、方向を感じる、ぼんやり見る、くっきり見る、の4段階に分けると、目の大きな変化とよく対応しました。最初のオプシンから、くっきり見る目までは約1億7000万年でした。
どうやって: 今の動物の行動に必要な光の量や細かさを物理で計算し、動物の家系図に重ねました。方向を感じるしくみは少なくとも2回、見る目は何度も別々にできたと分析しています。
わかっているフェウダら(2012年、PNAS)[3]
動物のオプシンは、メラトニン(体内時計に関わるホルモン)を受け取るたんぱく質の遺伝子と、同じ祖先の遺伝子から重複して生まれました。最初のオプシンは、まだ光を感じなかった可能性があります。
どうやって: 多くの動物のオプシン遺伝子を集めて家系図を作りました。その後の重複で3つのグループに分かれ、今の動物の目のオプシンはどれかに入ることを示しました。
わかっているハルダーら(1995年、Science)[4]
ショウジョウバエで、目を作る遺伝子 eyeless を羽や脚や触角ではたらかせると、そこに目が作られました。この遺伝子はマウスやヒトの Pax6 遺伝子と同じ家系です。
どうやって: 遺伝子を体のさまざまな場所ではたらくように操作し、できた組織を調べました。昆虫と脊椎動物という遠い動物で、目づくりの指令役が共通していることがわかりました。
有力な仮説ラムら(2007年、Nature Reviews Neuroscience)[5]
脊椎動物のカメラのような目は、ヤツメウナギの仲間とあごを持つ魚が分かれた約5億年前までにできていたと考えられます。
どうやって: 今いる動物の目や網膜、オプシンの研究を広く集め、目ができた順番の筋書きを組み立てた総説です。ヌタウナギの単純な目など、途中を思わせる例を使っています。
03 数字と例えでいうと目ができるまでに、どれくらい時間がかかったの?
計算の上では、平らな光センサーからレンズのある目まで数十万年で足ります。実際の歴史では、最初のオプシンから見る目まで約1億7000万年かかったと推定されています。
| 項目 | 値 | 身近な例えでいうと |
|---|---|---|
| 平らな光センサーからレンズのある目まで(計算) | 数十万年(遅めの見積もり)[1] | 1億7000万年を1日にすると、50万年でも約4分 |
| 最初のオプシンから、くっきり見る目まで | 約1億7000万年 [2] | 1年を1ミリにすると170キロ |
| 見る目がほぼそろった時期 | カンブリア紀の初め、約5億3000万年前 [2] | 恐竜が現れるよりずっと前 |
| 脊椎動物のカメラのような目 | 約5億年前までに [5] | 今の魚・カエル・鳥・ヒトの目のもと |
| 目を作る遺伝子を別の場所ではたらかせた結果 | 羽・脚・触角に目ができた [4] | 指令役の遺伝子1つで、目づくりが始まる |
04 まだわかっていないこと目の進化で、まだわかっていないことは?
目が動物の中で何回別々にできたのか、最初のオプシンがどうして光を感じるようになったのかは、まだ決着していません。
- 目は1回できたのか、何度もできたのかイカとヒトの目はよく似ていますが、形のでき方は別々だと考えられています。一方で、目づくりの指令役の遺伝子は共通です [4]。「目の部品の道具箱は1つ、目そのものは何度も」という見方が有力ですが [2]、数え方はまだ定まっていません。
- 最初のオプシンはなぜ光を感じたのか最初のオプシンは光を感じなかった可能性があり [3]、いつ、どの変化で光を受け取るようになったのかはわかっていません。
- 計算だけでは足りない部分ニルソンとペルガーの計算は目の形だけを扱っています [1]。見た情報を使う神経や行動が、同じ速さで変われたのかは別の問題として残っています [2]。
05関連する記事
06よくある質問
目は「半分」では役に立たないのでは?
役に立ちます。光の有無だけ、方向だけ、ぼんやりした形だけがわかる目を持つ動物は、今も多くいます。どの段階も、持たない個体より生き残りや子を残すのに有利になり得たと考えられています。
ヒトの目とタコやイカの目は同じもの?
形はよく似ていますが、別々にできたと考えられています。ただ、目を作る指令役の遺伝子や光を受け取るオプシンは、遠い動物の間で共通しています。
目はどれくらいの時間でできたの?
計算では、平らな光センサーからレンズのある目まで数十万年で足ります。実際の歴史では、最初のオプシンから見る目まで約1億7000万年かかり、約5億3000万年前のカンブリア紀の初めまでにほぼそろったと推定されています。
出典
- Nilsson DE, Pelger S (1994). A pessimistic estimate of the time required for an eye to evolve. Proceedings of the Royal Society of London B 256, 53-58. https://doi.org/10.1098/rspb.1994.0048
- Nilsson DE (2013). Eye evolution and its functional basis. Visual Neuroscience 30, 5-20. https://doi.org/10.1017/S0952523813000035
- Feuda R, Hamilton SC, McInerney JO, Pisani D (2012). Metazoan opsin evolution reveals a simple route to animal vision. Proceedings of the National Academy of Sciences 109(46), 18868-18872. https://doi.org/10.1073/pnas.1204609109
- Halder G, Callaerts P, Gehring WJ (1995). Induction of ectopic eyes by targeted expression of the eyeless gene in Drosophila. Science 267, 1788-1792. https://doi.org/10.1126/science.7892602
- Lamb TD, Collin SP, Pugh EN Jr (2007). Evolution of the vertebrate eye: opsins, photoreceptors, retina and eye cup. Nature Reviews Neuroscience 8, 960-976. https://doi.org/10.1038/nrn2283


