カンブリア爆発とは? 動物が一気に増えた理由はまだわかっていない

約5億4000万年前から、海の地層に動物の化石が急に増えます。目や脚やからを持つ、今の動物の祖先たちです。この出来事を「カンブリア爆発」と呼びます。何が起きたのかはよくわかってきましたが、なぜ起きたのかは、まだ答えが出ていません。
3行でわかる
- カンブリア爆発は、約5億4000万〜5億2000万年前に、さまざまな動物の化石が地層に急に現れた出来事です。
- 中国の澄江(チェンジャン)やカナダのバージェス頁岩では、やわらかい体まで残った化石が見つかり、当時の姿がわかりました。
- なぜ起きたのかは決着していません。酸素の増加、食う食われる関係、体をつくる遺伝子のしくみなど、いくつもの説があります。
01 わかっていることカンブリア爆発って何が起きたの?
約5億4000万〜5億2000万年前に、今いる動物の大きなグループの多くが、化石として次々に現れました。これは化石の記録から確かめられています。
カンブリア紀は、約5億3900万年前に始まった地質時代です [7]。この時代の前半に、節足動物(エビや昆虫の仲間)や、背骨の祖先を持つ動物などの化石が、地層に一気に現れます [2]。
「爆発」といっても、一瞬の出来事ではありません。約2000万年かけて起きたことです [2]。ただ、地球の長い歴史から見ると、とても短い間に多くの形が現れました。
また、カンブリア紀より前にも動物はいました。約5億7100万年前のエディアカラ紀の化石も見つかっています [2]。カンブリア爆発は、その後に続いた多様化の1つの段階だと考える研究者もいます。
02 どうやってわかったのかどうやってわかったの?
やわらかい体まで残った特別な化石の産地と、遺伝子から分かれた時期を推定する方法の、2つから調べられています。
わかっているウォルコット(1909年発見、カナダ・バージェス頁岩)[5]
カナダのロッキー山脈で、やわらかい体の形まで残ったカンブリア紀の動物の化石が見つかりました。
どうやって: ふつうは骨やからしか化石になりませんが、ここでは体の柔らかい部分まで残りました。2014年には、元の産地から約40キロ離れた場所でも、新しい種が全体の22%を占める化石群が報告されています [8]。
わかっている澄江の化石産地(1984年発見、中国・雲南省)[6]
約5億1800万年前の地層から、20以上の門(動物の大きなグループ)にわたる300以上の生き物が報告されています。背骨を持つ動物の初期の仲間もふくまれます。
どうやって: かたい部分だけでなく、体の柔らかい部分まで細かく残った化石を調べています。
わかっているフーら(2019年、Science)[4]
中国の清江(チンジャン)で、約5億1800万年前の新しい化石産地が報告されました。見つかった生き物の約53%が新しい種類でした。
どうやって: 浅い海の少し沖合の地層から、やわらかい体の化石を集めました。こうした産地はまだ見つかり続けており、当時の動物の数え方も変わっていく可能性があります。
有力な仮説アーウィンら(2011年、Science)[1]
遺伝子から推定すると、動物の大きなグループは、化石に現れるより数千万年も前に分かれていたと考えられます。
どうやって: 今の動物の遺伝子の違いから分かれた時期を計算し、化石の記録と比べました。体をつくるしくみは早くにでき、生態系で栄えたのは後だった、と論じています。
03 数字と例えでいうとどれくらい昔で、どれくらい短いの?
地球の歴史46億年を1年にすると、カンブリア爆発は11月19日から20日にかけての、わずか1日半ほどの出来事です。
| 項目 | 値 | 身近な例えでいうと |
|---|---|---|
| カンブリア紀の始まり | 約5億3880万年前 [7] | 46億年を1年にすると、11月19日ごろ |
| カンブリア爆発の期間 | 約5億4000万〜5億2000万年前(約2000万年)[2] | 46億年を1年にすると、約1日半 |
| 澄江の化石の年代 | 約5億1800万年前 [6] | 46億年を1年にすると、11月20日ごろ |
| 澄江で報告された生き物 | 20以上の門、300以上 [6] | 今の動物の大きなグループの多くが、もうそろっていた |
| 清江の化石のうち新しい種類 | 約53% [4] | 見つかった生き物の半分以上が、それまで知られていなかった |
04 まだわかっていないことなぜ動物が一気に増えたの?
まだわかっていません。酸素の増加、食う食われる関係、体をつくる遺伝子のしくみなど説はありますが、1つの説だけでは、起きた時期と多様さの両方を説明しきれていません。
- 酸素が増えたから?(有力な仮説)海の酸素が増えて、大きな体や活発な動きが可能になったという説です。スパーリングらは、酸素が少ないと肉食の動物が少なくなることを今の海で示し、酸素と「食う食われる」関係を結びつけました [3]。ただ当時の酸素の量は、まだ正確にはわかっていません。
- 食う食われる関係が始まったから?(有力な仮説)捕食者が現れ、からや目などを持つものが生き残りやすくなった結果、形が多様になったという説です。ただこの説だけでは、なぜその時期に起きたのかを説明しにくいとされます [3]。
- 本当に「爆発」だったのかアーウィンらは、動物のグループは化石に現れる数千万年前に分かれていたと推定しています [1]。ウッドらは、エディアカラ紀から続く何回かの多様化の1つにすぎないと論じています [2]。化石に残りやすくなっただけ、という見方もあります。
05関連する記事
06よくある質問
カンブリア爆発はいつ起きたの?
約5億4000万〜5億2000万年前です。カンブリア紀の前半にあたります。約2000万年かけて起きたので、一瞬の出来事ではありません。
カンブリア爆発の前に動物はいなかったの?
いました。約5億7100万年前のエディアカラ紀の化石も見つかっています。遺伝子の研究では、動物の大きなグループはさらに前に分かれていたと推定されています。
なぜカンブリア爆発は起きたの?
まだわかっていません。海の酸素が増えた、捕食者が現れた、体をつくる遺伝子のしくみが整った、などの説があり、いくつかが組み合わさったという見方が多くあります。
カンブリア紀の化石はどこで見られる?
代表的な産地は、中国・雲南省の澄江と、カナダのバージェス頁岩です。どちらも、やわらかい体まで残った化石が見つかっています。
出典
- Erwin, D. H. et al. (2011). The Cambrian conundrum: early divergence and later ecological success in the early history of animals. Science 334, 1091-1097. https://doi.org/10.1126/science.1206375
- Wood, R. et al. (2019). Integrated records of environmental change and evolution challenge the Cambrian Explosion. Nature Ecology & Evolution 3, 528-538. https://doi.org/10.1038/s41559-019-0821-6
- Sperling, E. A. et al. (2013). Oxygen, ecology, and the Cambrian radiation of animals. PNAS 110, 13446-13451. https://doi.org/10.1073/pnas.1312778110
- Fu, D. et al. (2019). The Qingjiang biota—A Burgess Shale–type fossil Lagerstätte from the early Cambrian of South China. Science 363, 1338-1342. https://doi.org/10.1126/science.aau8800
- Royal Ontario Museum. The Burgess Shale: Timeline. https://burgess-shale.rom.on.ca/history/historical-context/timeline/
- IUGS Geological Heritage Sites. Cambrian Chengjiang Fossil Site and Lagerstätte. https://iugs-geoheritage.org/geoheritage_sites/cambrian-chengjiang-fossil-site-chengjiang-lagerstatte/
- International Commission on Stratigraphy. International Chronostratigraphic Chart (2024/12). https://stratigraphy.org/ICSchart/ChronostratChart2024-12.pdf
- Caron, J.-B. et al. (2014). A new phyllopod bed-like assemblage from the Burgess Shale of the Canadian Rockies. Nature Communications 5, 3210. https://doi.org/10.1038/ncomms4210


